朗読用フリーテキスト①「遅く起きた朝」

物は試しということで、一本目です。

朗読用のフリーテキストです。続きからでどうぞ。

掲載元は提示してくれると嬉しいです、必須ではありません。

著作権は破棄していません、自作宣言は勘弁してください。

 

私:一人称の自分です

同居人:同居人の相手です

性別は読む人に合わせられるように中性的にしています。私も同居人も性別指定は特にありません。

 

 「おはよ」
太陽は真上に存在していた。時刻は昼の12時。おはようと言うには、遅い時間。しわくちゃなTシャツと、寝癖を眺める同居人の顔は冷ややかな眼をしていた。
「起きるの遅すぎ」
「昨日、朝まで仕事してたから……」
冷蔵庫を開いて、牛乳を取り出す。残りが少ないので、行儀悪くそのまま口をつけて飲み干す。
若干隠れてやったつもりだったのに、同居人には見られていた。
「買い物行ったんだ」
「午前中にね」
同居人は雑誌に眼を落としていた。お腹がすいたので、炊かれていたご飯を茶碗によそってから、お茶漬けのもとをかけて、お湯を注ぐ。スプーンを持って、同居人の隣で食べる。
「なんでここで食べるの」
「良いじゃん?」
リモコンを手にとって、テレビをつけるとバライティ番組が流れたので、そのまま見る。
「ちょっと音楽流してたのに」
「ん、ふぉめん……」
「食べながら喋らないで」
音楽が止まる。寝起きだったのもあって、音楽が流れていることに全く気が付かなかった。バライティ番組は面白いけども、同居人が不機嫌そうでちょっと面白くない。
だが、ここで私はふと、本当に不意打ちを受けるように思い出した。
「……あれ?朝起こした?」
「うん」
「ごめ」
「別に良いよ」
……何かがおかしい。同居人の機嫌が尋常じゃないくらい悪い。気まずい私はスマホを開いて誤魔化す。ご飯食べながらスマホなんて、また行儀が悪い。同居人は立ち上がって、トイレに行った。立ち上がった時に思わず肩をあげてしまった。
「……何かしたっけな」
Twitterを開くと、そこに書かれていたのは同居人のツイート。そして、私は青ざめた。そこには一人でカフェに居る同居人。そう、私はこの日同居人と出かける約束をしていたのだ。仕事も切羽詰まっていた私は、すっかり忘れてしまっていた。
そして、今日の朝……いや、昼に起きた時からの行動を思い返す。同居人は冷ややかな眼で私を見ていた。起きてご飯食べて、テレビをつけたら音楽を……そうか、音楽が小さかったのは私が寝ていたからか。仕事だから、同居人も強く言えなかったのだろう。本来私と行くカフェでコーヒーをさっさと飲んで、買い物して、帰ってきたのだろう。
罪悪感がのしかかる。トイレから帰ってきたら、どんな顔をすればいいのだろうか?
「はぁ……」
またビクッとしてしまう。そこには同居人が仁王立ち。
「思い出した?」
「はい、全て思い出しました」
「言うことは」
「ごめんなさい……」
「よろしい」
同居人の手にはアイスコーヒー。
「……まぁ、仕事だし仕方ないしね。はい、お疲れ様」
更に罪悪感がのしかかる。なんて出来た同居人なのだろうかと感銘を受けてしまう。
「ありがと……」
「だが、次は奢ること」
「残業代で奢る!」
遅く起きた日。プライベートも、気にかけないとなぁと思った土曜日だった。